97年8月。この日の最終目的地は釧路。
寒くて、もう体の芯から冷え切って豚汁でも食べたい気分だった。
国道38号 幕別から音別に向かう途中で自販機があったので
休憩する事にした。そこには、開店休業中のような店が2軒。
その時、駐車場にとまっていた軽トラの陰からおじいさんが現れた。
そのうちの一軒の「キャラバン」という店の店主だった。
「豚汁ありますか?」 思わず声を掛けていた。
じいさんは、「まぁ、入んな。」とニコリともせずに言った。
店内には婆さんと、猫が一匹。そしてカラフルなオウムが一羽。
テーブルの上には雑誌やらいろんな物が山積みで、どう見ても
食堂を営業してるとは思えない。
逃げ出したい気分だったが、それはできなかった。
爺さんはメニューにはない豚汁を作ってくれた。
爺さん 「ジャガイモなかったかね?」
婆さん 「ないよ。買っとかなきゃね。」
爺さん 「はるさめ、あったよな。」
婆さん 「そんなもん、入れるのかい?」
なんだか会話を聞いてるとどういうものが出てくるのか不安になってくる。
数分後、アツアツの豚汁が姿を表わした。
具は豚肉、春雨、ミックスベジタブル(コーン、にんじん、グリーンピース)
タマネギなど、ありとあらゆるモノがてんこもりだった。
豚汁を頂いてる最中、婆さんがいろんな話をしてくれた。
飼い猫が裏の線路で(!)轢かれたけど生きていること、
昔は人を雇って営業していた事。
寒いから風呂に入っていけ、とか、トイレの心配までしてくれた。
豚汁を食べ終わり、先を急ぐので、店を出る事にした。
「おいくらですか?」
「う〜ん。じゃあ、ひとり400円でいいや。」ってアバウトな・・・。
お陰で体はあったまり再び走り出す事ができた。
味はどうだったかって?? ・・・その後しばらく胸焼けしてたよ。
まだ、営業(?)してるのだろうか。キャラバン。

3年後の6月16日、同じ道を通ったのでキャラバンを訪ねてみる事にした
店にのれんは無く、店の前にあの時のおじいさんがいた。
エンジン付き草刈機を一生懸命準備していた。
これから草刈に行くという事で忙しそうだった。
3年前に豚汁をご馳走になった事を話したが、おじいさんは覚えていなかった。
店にいたオウムとネコの消息を尋ねてみた。
両方とも死んでしまったそうだ。

おばあさんは、腰を痛めたらしいが元気らしかった。
店は、もう完全に閉めてしまったそうだ。
なんだか、寂しかった。
でも、あの時のおじいさんに会えて良かった。
本当に幻の食堂になってしまったなぁ・・・。